2018.7.9
  「攻めと守り
   
                                  参事 上野台 直之   
   

 サッカーFIFAワールドカップ・ロシア大会が佳境を迎えている。私もビール片手に毎晩テ
 
レビにくぎ付けである。各国の奮闘ぶりを見ながら、色々と考えることが多い。

 開幕直後にはアイスランド代表が脚光を浴びたが、アイスランドは人口約35万人の小国であ

る。この数値を本県に置き換えれば、郡山市やいわき市の人口規模と同等であり、減少はしてい

るが福島県全体の人口規模の方がはるかに多い。そのような小さな国家規模であってもヨーロッ

パ予選を勝ち抜き、世界の檜舞台で活躍している姿を見ると、無粋なのだが「地方創生」などを

連想し、小さな自治組織でもできることはある、福島県もまだまだこれから!などと心強く思っ

てしまう。
 
 また、フランス対アルゼンチン戦は残酷なまでに世代交代を感じる試合であった。当たり前の
 
ことなのだが、どの世界にあっても主力は次の新しい世代へ次々と替わっていく。同時代のスタ
 
ープレイヤーが去っていくようで、同情の念を禁じ得なかった。(全く比較対象にもならないが)

事務職二十数年の身に照らして振り返るとプレイヤーの時代は苦しいながらも楽しく、輝ける。

目の前の仕事に打ち込み、充実している時(実際には切羽詰まっている時がほとんどなのだが)

誰でも滅私になれると思う。

 日本代表がベスト8をかけたベルギー戦は 残念ながら惜敗したが、本当に立派な戦いであっ

た。前半から「攻め」の姿勢で、後半早々に2点を先行した。サッカーは攻守が瞬時に転換し、

そこに醍醐味があるところだが、試合の大局としては、優位を保ちながらベルギーの反撃を死守

する、すなわち「守り」の局面に転換していたのだろうと思う。

 センターの図書室に山本七平氏の「帝王学 ~ 貞観政要(じょうがんせいよう)の読み方とい

う書籍があり、目を通したことがある。

 「貞観政要」は、古代中国の王朝・唐の二代皇帝・太宗(598~649年)とその家臣の言行録で

ある。太宗と家臣が為政者としてのあるべき姿について議論し、時には家臣が命を賭して諫めな

がらも、そうした意見具申を懐深く受け止め、自身の行動を厳しく律した太宗が大皇帝となって

いくという過程が描かれている。ビジネスリーダーお勧めの書などでよく紹介されているが、そ

の一端を読むだけでも、確かに組織マネジメントの要諦に通ずる多くの示唆が得られる。

 その中で、太宗が「草創と守文、いずれが困難か。」と家臣に問う場面がある。「草創」とは

何かをゼロから立ち上げ、成果を作り上げていく過程(創業)、「守文」は成し遂げた成果を永

続的に保っていくための不断の努力のこと(維持)である。家臣達の議論を経て、結果、太宗は

「今は守文の困難さに、皆と共に慎重に対処したい。」と述べている。最大権力者である皇帝に

あっても、やはり守ること、維持することは難しいと認めたエピソードである。

 人口減少・少子高齢化の大きな波の中で、これからの自治体は、自らの地域の存続を賭けて、

独創的・効果的な「攻め」の施策が必要となる。 一方で、自治体の現場では、住民生活を「守

る」仕事が根幹として今後も続くであろうし、多くの職員はそうした「守る」ための仕事に懸命

に向き合っていることと思う。諸先輩から受け継がれてきた住民生活や地域を守っていくこと、

そのために行動する組織や人材を維持していくことは本当に大変なことだと改めて思う。全くも

って、守りは難しである。

 そのような雑事を考えながら、サッカーを楽しむ夜がしばらく続く。色々と批判されながらも

逆境の中で全力で戦った日本代表には本当にお疲れ様でしたと感謝を申し上げたい。



※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式
 見解を示すものではありません