2017.2.15
  「日々是修行」



  ワークライフバランス、という言葉を最近よく目にする。
 東京都では小池百合子都知事が職員の20時完全退庁を決め、時間になると庁舎は強制的に消灯されるようだ。
 政府も働き方改革という名のもと、いろいろと動いているようである。
 しかしながら、周りを見てみても、そう簡単にはいかないのが現実であろう。

 突然だが、「西の魔女が死んだ」(梨木香歩著)という本がある。映画化もされているので、知っている方も多いかもしれない。

 主人公は敏感な少女で、中学校に入ってすぐクラスでいじめにあい学校に行けなくなってしまった。いじめの理由は、友達の輪に入るために、興味もない話題をおもしろがったり、トイレに連れだって行ったりするのをやめたせいだった(自分に正直になったせいで周囲からのけ者にされてしまった)。仕事を持つ母親は、少女を田舎に住む祖母のもとへ預けることにするが、実は祖母は、予知や透視能力を受け継ぐ家系で、魔女だという。主人公は魔女修業の名のもと、祖母と生活するのだが、その修行の内容は、
  ・早寝早起き
  ・食事をしっかりとり
  ・よく運動し
  ・規則正しい生活をする
 というもの。
 これらのことは、生活の基本、土台となるものである。
 まずは主人公に生きる力をつけさせたい、と祖母は思ったのではないか。
 あまりにも普通のことで主人公は拍子抜けするが、その普通のことがとてつもなく難しいとも感じた。

 それから、一番大切なこととして、
  ・意志の力。自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力
 を持つこと、と教えられる。

 物語の中で主人公は、田舎でそれらを意識した生活を送ることで、自ら決めたことを遂行していく力、生きる力を養っていく過程が描かれている。

 働く身としても、身につまされる言葉である。
 社会人として、もちろん与えられた仕事は全力を尽くしてやり遂げるべきだが、それは寝る時間、食べる時間を削ってまで働けということではない(と思う)。ましてや、自分のやりたいことばかりして仕事や生活に支障をきたすこともあってはならない。仕事とプライベートな時間をうまくやりくりできるように、自分でしっかり生活をコントロールできるようにならなければいけないのだ。

 とはいえ、プライベートが充実できれば最高であるが、なかなか「充実」まで到達できないのが実情である。まずは
  「早寝早起き。食事をしっかりとり、よく運動し、規則正しい生活をする」
ことから始めるべきなのかもしれないと思い、ひとまず、私自身も魔女修業に取り組んでみた。
 24時までに寝る(本当は22時までに寝られるといいらしいけれども・・。どう考えても不可能なので、できるところから)。休日も決まった時間に起きる。食事も3食とる。昼はお弁当を持参し、なるべく体にいいものを食べるように(おいしいかどうかは別として)。運動は、まあ、ぼちぼち始める予定だ。
 これだけでも少々、違ってきた感じがしている。

 ところで、この本で紡がれる祖母の言葉は、ひとつひとつが心を打つものばかりである。

 祖母と暮らしていたある日、主人公は父親から、単身赴任先に母親と一緒に引っ越してこないかと、暗に転校を進められる。しかし、それは「逃げ」になるような気がしてすぐには頷けない主人公に、祖母はこういうのだ。

 「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」

 それは逃げではなく、自らが選択していいものであり、自らが決めることだ、と。

 「意志の力。自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力」

 それらもきっと、社会人、学生問わず、誰もが持つべき力なのだろう。
 でもそれらは、意識していないと身につかない。
 自分にはあるだろうか?
 私もまだまだ修行の身である。



※ このコラムは執筆者の個人的見解であり、公益財団法人ふくしま自治研修センターの公式見解を示すものではありません